自衛隊 歯科医官について解説

「実は・・・」
現在、市中病院で口腔外科医をしている筆者ですが、実は他にしたかったことがあります。それは・・・、”軍医”です。正確には「歯科医官」といいますが、要するに自衛隊の歯科医師です。卒後、受験しようと思ったのですが、残念ながら視力が悪く受験資格が得られませんでした。視力って大切ですね。

「軍隊における歯科医師」
軍隊に歯科医師がいることをどうお思いになりますか?意外ですか?それとも当然と思われますか?
司馬遼太郎の”坂の上の雲”をお読みになったことはおありでしょうか?その中に、日露戦争中に児玉源太郎満州軍総参謀長が、歯の痛みに苦しみ、ドイツ軍には歯科医師がいるのに、どうして日本軍にはいないのかと嘆くシーンがあります。このエピソードが本当かどうかはともかく、どうやら、少なくとも日露戦争当時までの大日本帝国陸軍には歯科医師は従軍していなかった様です。
その後、世界は第一次世界大戦に突入していきますが、その際に問題になったのは頭部外傷でした。事実、それまでの革や布の帽子から鉄製のヘルメットが採用されるようになりました。そうです、それまでの兵士はヘルメットはかぶっていなかったのです。塹壕に入って射撃戦をした場合、首から下は地面の中にありますから被弾することはありませんが、首から上は違います。そして、頭部に被弾した場合は大抵即死です。ところが、顔の下半分に被弾したときは、負傷しますが救命可能でした。そこでの経験から口腔外科医=歯科医師の重要性が増すようになってきたのです。
帝国陸軍は地上戦に直接的に地上部隊を派遣はしませんでしたが、観戦武官は派遣しています。そこからの情報で、口腔外科領域の負傷兵についての情報を得たのでしょうか、歯科医師が軍に配属されるようになりました。
ところで、昭和30年代の口腔外科の教科書には、日露戦争から第二世界大戦までの日本軍の経験した顔面部の負傷についてのデータがありました。最近の教科書にはそのような記載はありませんが、終戦直後では傷痍軍人も多かったでしょうし、必要だったのでしょう。

「平和な時代の軍医の役割」
現在の我が国を含めて戦時ではない時代の軍隊における医師・歯科医師の役割は、専ら兵士の健康管理にあります。定期健康診断は定期的に行なわれますし、長期にわたる演習の前や、PKOなどの海外派遣前にも、歯科健診は行なわれるそうです。
特に、航空機搭乗員のむし歯治療は重要です。気圧の変化がむし歯を痛くするからです。そういった意味では、潜水艦搭乗員や潜水救難艦のDSRV搭乗員やダイバーの場合も重要なのでしょうが、こちらの話はあまり聞かないですね。減圧時の痛みはあっても、加圧時の痛みはそれほど感じないものなのでしょうか。

「自衛隊に興味があったわけ」
なぜ、筆者は歯科医官になりたかったのかといいますと、ミリタリー好きという言葉につきます。幼少時から、プラモデルが好きでした。プラモデルと言いますと、ガンダムなどのロボット系、車、船、飛行機、などいろいろありますが、筆者が好きだったのは、装甲戦闘車両、艦船、作戦用航空機でした。
例えば、戦闘機はあれだけの性能を誇るのに、デザインとしての無駄が全くない。非常に洗練されています。この機能美、すばらしいと思いませんか。艦船もそうです。最近のステルス性優先のシンプルなデザインにしろ、大戦中の対空火器でハリネズミ状態になった艦船にしろ、どちらのその時代における設計思想の一つの頂点なのです。その機能美は、古今東西共通です。そこのところに、ほれてしまったんでしょうね。ですから、アニメのロボット系は作ったことがないのです。
こうしたプラモデル作りが転じて、地元に陸上自衛隊施設があったことから、ディテールアップのために、施設開放日に見学に行くようになりました。そこから自衛隊に興味がわいてきたのです。

「就職活動」
大学卒業の年、当然就職活動をします。正確には研修病院を探す活動です。同窓生の過半数は母校の附属病院に行った様ですが、筆者ははなからそんな気は毛頭なく、他施設に電話をかけたり、いろいろアプローチしていました。
防衛省自衛隊の資料も取り寄せましたが、一般の大学病院とは異なり、身体的条件が非常に厳しかったです。ですから、大学の6年次になると、腕立て伏せや腹筋などの筋トレをし始めました。国家試験対策で忙しかった時期なのにも関わらず。
身長や体重、胸囲などは、いいのですが、視力が足りませんでした。矯正視力にしてもです。
資料を取り寄せる際に、地域の募集担当みたいな自衛官の方がおられまして、とても親切な方で、いろいろ骨を折ってもらったのですが、どうもダメでした。確かに、戦地に赴いた時に目が見えませんでは、足手まといにしかなりませんからね。

「そんな筆者のプロフィール」
そんな筆者ですが、自衛隊には入ることなく、大学病院を経て市中病院で口腔外科医として勤務医をしております。
筆者の略歴です。非常に簡単で申し訳ありませんが・・・。
平成XX年 某大学歯学部卒業
卒後1年目: 東北地方の某大学医学部口腔外科学教室入局
〜以降2年間の研修医時代〜
卒後3年目: 某市立病院口腔外科レジデント
卒後5年目: 某私立病院口腔外科レジデント
卒後6年目: 某私立診療所歯科医長
卒後9年目: 某公立病院口腔外科医長
卒後12年目: 某私立病院口腔外科医長
現在に至る。
という感じです。
レジデントと医長の違いは、単なる卒後年数でして、論文の数とか認定医の数とかで決まるものではありません。この点、年の功が大きい様ですね。
卒後、一般開業医に勤めることがなかったので、このように大学病院の関連施設を点々としています。
歯科医官にはなり(れ?)ませんでしたが、人にも環境にも恵まれた非常に有意義な歯科医師生活を送っています。仕事を始めてからわかったのは、この職業に特有なのかどうかはわかりませんが、医師にも歯科医師にもミリタリー好きな先生が割と多いことです。駐屯地祭や基地祭に一緒に行ったりしています。類は友を呼ぶとは、よく言ったものです。
ところで、歯科医官になっていたら今頃何をしているんだろうと思ったりすることもありますが、ホント、どんな人生を送っていたのでしょうか。PKOで海外に行ったりしているのでしょうか?病院勤務の口腔外科医とはかけ離れた生活を送っているであろうことは、疑いないでしょうね。

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